ガリア平定、そしてルビコン川をわたる

ガリア平定、そしてルビコン川をわたる前半部分は「ガリア戦記」にもとづいたガリア戦役の記述が続きます。ようやく平定したかに見えたガリアも、聡明なヴェルチンジェトリクスという人物の先導により反カエサルとして一斉に蜂起。これまでガリアではほぼ一方的に勝利を得てきたカエサルにとっては、初めて出てきた敵側の戦略家。そのヴェルチンジェトリクスとの戦い・駆け引きは固唾を飲んで読み進みました。また、印象的だったのは、戦いの節目節目に発せられる、カエサルの部下兵士たちに対する言葉。その表現力のうまさだけでなく、本心から出た言葉だったからこそ、「この人のためなら」と思わせたのだろう。素晴らしいリーダー像です。
本書後半は、カエサルを内乱蜂起へと向わせた、元老院派との緊迫した状況が描かれます。「ルビコン川を渡る」…世界史オンチの私は、言葉の意味は知っていても誰のどのようなエピソードかは知らずにいましたが、まさのその意味のとおり、決断に際してのカエサルの苦悩がよく伝わってきます。
塩野氏の筆もますます冴え渡る一冊です。

緊迫感がすごい ガリア戦役の6年目からルビコン川を渡るまで、すなわち、紀元前53年から紀元前49年の1月までの4年余りがこの巻の舞台である。

 すでに5年に及ぶガリア戦役によってローマの覇権がガリア全域に及びつつあったが、そんな状況において、クラックスがパルティアで敗死して三頭政治の一角が崩れて政治の均衡が崩れてしまった(前53年)。さらにガリア民族の大蜂起が起きてカエサルが窮地に立たされるなど、今までの順調な展開とは違った動きがある。ガリア戦役は、カエサルがアレシア攻防戦に勝利することによってその後の帰趨を決定したが、その勝利に至るまでの過程は実に危険に満ちたものであった。

 政治的にも、クラックスが死に、ポンペイウスが元老院派に取り込まれたことにより、カエサルの政治的基盤が崩されていく。元老院の意地の悪い姦策が次々に功を奏することで、カエサルは窮地に追いやられていく。国外において他民族と戦いつつ、背後にいる国内の勢力とも戦わなければならぬ緊張関係が続いた結果、運命のルビコン川に至る。

 カエサルや彼に関わるさまざまな人々の人間的な悩み、苦しみ、思惑が緊迫感とともに赤裸々に描かれていて、あっという間に読み終わってしまった。

ルビコン川という小さな川 カエサルのガリア戦は 最大のライバル ヴェルチンジェトリクスを得て これを打倒した時点で終わる。本書では その最後のガリアでの戦いを前半部分で描き出す。

 外征が終わると 内乱が始まることは歴史の常である。カエサルもそんな歴史の一例だ。外を制した彼の目の前に 「内部」が 敵対していくのが 本書の後半である。

 ルビコン川とは実際には小さな川だと聞く。ラインやドナウなど 欧州史を彩る大河に比べると小川のようなものという。
 そんな小さな川が 世界でも有数の有名な川になった場面を本書は描く。この部分は 塩野の歴史家としてではなく「作家」としての 筆致が冴え渡る場面だ。一頁程度の部分ながら 歴史が転換する瞬間を きらめかせている。

 カエサルの物語も いよいよ後半戦に入っていく。ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)ローマ人の物語10 (新潮文庫)

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